2014年7月18日金曜日

ついに! 夢のギターを弾かせてもらった!!

自分にとっての夢のギターは、何本かあるけれど、究極の1本といえば、Gibson L-5 になりましょうか。なかでも1920年代〜1930年代に生産されたノンカッタウェイで16インチの L-5 これが夢です。

そんな1930年製の L-5 を、ついに今日、都内のある場所にて弾かせてもらってきました。この L-5、開発者であるロイド・ロアのサイン付きとなると、500万円以上は必至の高級ヴィンテージギターです。

今日、弾かせてもらった L-5 は、サイン無しのものでしたが、その生音と体に共鳴するフィーリングを感じとることができました。ギターを持ったときの第一印象は「軽い!」「作りが良い」というもの。

これが、夢にまで見たあの L-5 か!








その L-5 にはフラットワウンドが張ってありましたが、音量は十分です。1940年代の L-4(fホールの16インチ)のようにカリンカリンではなく、それをもっと大人っぽくしたような、余分な装飾がない素直な音です。そしてなんとも言えない奥行き感。

この時代の L-5 を忠実にコピーした、The Loar LH-600 というギターを持ってますが、音量では Loar が勝っているように思いました。Loar 恐るべし!

試奏した L-5 は、セットアップの良さから、とても84年も前のギターとは思えず、まだまだ現役で使える状態です。夢のギターに、ちょっとだけ近づけたかもしれません。

2014年7月8日火曜日

マーティンD-28(1983年製)リペア記 その8

ひと通りのリペアが終了した Martin D-28(1983)です。 所々にクラックの補修痕は残ったままですが、リフィニッシュしてしまうと音が変わる可能性があるので、このまましばらく使おうと思います。

我が家のマーティンは、これで2本目。もう1本は、Martin OOO-28 EC という、エリック・クラプトンのシグネイチャーモデルです。このギターもとても気に入っています。

わたしは、どちらかといえば、Gibson の L-00 や L-1 といったスモールボディのギターが好みです。座って弾くことがほとんどなので、取りまわしが楽なほうが体に馴染んでいるからです。







1968年の Gibson J-45 もかつて所有しておりましたが、ネックが細すぎるのと、ドレッドノートがどうしても体に馴染まず、手放してしまいました。音はとても素晴らしかったので、すこし後悔しています。

今回、D-28 の修理を通じて、このギターの良さも十分わかりました。やはり、ギターの音色は材質とシーズニングで決まりますね。

2014年7月7日月曜日

マーティンD-28(1983年製)リペア記 その7

いよいよリペアも佳境です。まず、割れを補修した箇所すべてにクリアラッカーを塗って乾燥させることにしました。今回は、スプレーを使わずに筆で塗っているため、リペア箇所はけっこう目立ちます。

各部の損傷があまりにも激しいため、傷を目立たないようにするには、トップ、サイド、バックすべての塗装を剥がして、リフィニッシュする必要がありそうです。






今回は、使える状態まで修復できるかを確認するのが目的なので、とりあえず割れの補修箇所の表面をクリアラッカーでシーリングする作業を優先しました。

サイドには両側とも木目に沿った長いクラックが幾本も入っております。トップとバックの割れは、裏側から止め木で補強済みですが、サイドは徐々に補強する予定です。

この時代のマーティンのサイド裏には、補強のために布テープが貼られています。止め木を貼る際には、この布テープを避けてローズウッドに直接貼る必要があるので、この作業は結構たいへんです。

タイトボンドと止め木、クリアラッカーで補修したすべての箇所は、強めに叩いても安定していたので、すこし気が早いのですが、テストで弦を貼ってみることにしました。

幸いなことに、補修した箇所は安定しており、レギュラーチューニングまで弦の張力をかけても異変は起こりませんでした。ネックの反りもほとんどありません。

驚いたのは、この D-28 の音です。チューニングしている段階から、D-28 特有の低音が体に伝わってきて、高音は鈴の音のようなサウンドが心地よく響いています!我ながら、これには感動しました。

マーティンD-28(1983年製)リペア記 その6

 バック割れのリペアの続きです。ほぼ元の位置に固定できた破損箇所ですが、1カ所だけ欠けてしまったので、ローズウッドの木片を切って埋め込みました。

表面はタイトボンドがハミ出していたり、亀裂は残ったままですが、裏側の当て木も固まったので、きちんと密着しております。

今回の修理では、破損した部分を元に戻して、ひとまずギターを使える状態にしたいと思います。修理痕が目立たないように手を加えるかは、今後の経過次第ということで・・・。



従って、多少の見栄えの悪さには目をつぶり、どんどん先に進みます。

さすがに、上の写真のままでは可哀想なので、継ぎ足した木片にセラックを塗ってから、リペア箇所全体にクリアラッカーを塗り重ねました。まだ、痛々しさが残ってますが、木は動く様子もなく安定しております。
次に、運送事故で破損する前から、このギターに発生していたトップ下位置のクラックの修理に取りかかりました。クランプしている箇所の左右にある2本のクラックには、内側からスプルースの木片パッチで当て木しております。

この位置のクラックは、弦の張力で負荷がかかるので、しっかり定着させる必要があります。それにしても今回の作業では、この大型クランプが大活躍してくれております。

ギターが破損せずに届いていれば、この修理だけで済んでいたのに・・・という思いが頭をよぎります。


これで大きな整形は済みました。ギター内部から覗いて、修理箇所に隙間がないかを確認。必要な箇所には、内部からタイトボンドを塗って隙間を埋めていきます。

次に、クラック箇所の表面にラッカーを塗って、シーリングをほどこします。これをやっておかないと、水や汗を吸い込んでしまうので、必須の作業です。

クリアのラッカー塗料は、ニトロセルロースのものを使いました。スプレーは使わずに、筆で2〜3回塗り重ねてから、ギターを乾燥させました。

2014年7月6日日曜日

マーティンD-28(1983年製)リペア記 その5

さて次は、 無残にもエグれてしまったバックと、大きな割れ目が入ったサイドの修理です。ここが一番難しい予感がします。

まず、サイドにはローズウッドの木片を細かく切って、止め木として使用することにしました。この木片は 0.6mm とごく薄い素材なので、ボディの木目に沿った横の亀裂に対して、木片の木目を縦に貼り付けることで、強度を高めようと思います。
 作業に没頭していて写真を撮るのを忘れました。これは、作業に入る前に撮った、厚さ 0.6mm のローズウッドです。

サイドへの木片チップの貼り付けは、なかなか根気のいる作業です。集中力も必要なので、ここは一気に貼り付けるのではなく、時間をかけて少しずつ作業したいと思います。











いよいよ、最大の難関となるめくれ上がったバックの補修に取りかかりました。最初は、熱で温めてからエグれたローズウッドを元に戻そうと思いましたが、まずは自分の手で恐る恐る木を押してみると、意外にもすんなりと元の位置に戻るではありませんか!

結局、熱処理を行うことなく、木を整形した後、裏側からローズウッドの木片を貼り付けることにしました。この木片は、お店で厚さ1.3mmに切ってもらったものを使いました。

外側はご覧のとおり、万力で固定しながら、内側は専用の修理パーツを使って、ジャッキアップした状態にして、当て木の接着を待ちます。

左側には、サイドの割れを内側からパッチしたローズウッドの木片が並んでます。白く写っている液体は、タイトボンドです。乾くと半透明になります。



マーティンD-28(1983年製)リペア記 その4

補修用の材料が手に入ったので、さっそく修理に取りかかりました。まずは手作業でトップの割れを慎重に元の位置に整形していきます。

右手でトップ側の木を押しながら、サウンドホールから左手をトップ裏に伸ばして、なるべく水平になるように整えます。

次に表面にタイトボンドを十分塗ってから、余分なボンドを拭いて万力で固定します。 タイトボンドは、水に溶けるので、とても作業がしやすい優れものです。
しばらくこのまま放置します。
万力を取り外すと木は元の位置に戻りました。内側から当て木をするので、まだ仮止めの状態です。

スプルースの木片(薄さ1.3mm)を、割れ位置に収まるサイズに切って、裏側に貼り付ける場所を何度かリハーサルして確認します。

タイトボンドをたっぷりと木片に塗り、トップ裏から割れた部分に貼り付けます。表面から軽く木をコンコンと叩きながら、割れた位置とズレないよう確認しながらの作業です。
木片がズレていないか、内部の写真を撮って確認しました。ブレーシング上の木片右側に見えるのはチップ断面の汚れで、割れ痕ではありません。

ブレーシング下の木片は、位置がズレているように見えますが、木片チップ自体の柄でそう見えているだけです。2枚とも、割れ位置をしっかりカバーできておりました。

トップ反対側の割れも、同じように整形してから、スプルースの木片チップを裏から貼って、表面を万力で固定しています。

人間に例えるならば、複雑骨折手術ともいえる作業です。作業自体も骨が折れます(苦笑)。


2014年7月5日土曜日

マーティンD-28(1983年製)リペア記 その3

1983年製のマーティン D-28 という、その素性が判明したギターですが、補償について運送会社と相談したところ、梱包材と実物を見てからでないと判断できないということで、ギターを送ることに。

その後、運送中の事故であることが認められました。こちらとしては、とにかく元の状態に修理してもらうことを第一条件に交渉したのですが・・・。

運送会社では修理業者を2カ所あたってみたものの、修理不可能ということらしく、オークションの落札代金を弁償するかたちで補償したいとのこと。

当然、これでは納得がいきません。この品物を見つけて落札をしたこちら側の労力がこれでは水の泡です。

結局、出品者さんのご助力もあって、めでたくこのギターは我が家へと戻ってきました。落札代金も返金される予定です。こんないわくつきのギターですが、なんとか自分の手で修理してあげたいと思います。

というわけで、さっそく木材の専門店へ行って、このギターに使われているのとなるべく近いローズウッドとスプルースの材料を調達することに。店内に入ってみると、大小さまざまな木材が置いてあります。

ギター用に使われるメイプルや黒檀、ハワイアンコアなどは豊富でしたが、スプルースとローズウッドはかなり品薄の状態。特に、修理用に少量だけ入手するのは難しいようです。

店員さんに相談してみると、店内と作業場を探してくれて、なんとか少量のスプルースとローズウッドをわけてもらうことができました。

割れてしまった元の素材はなるべく生かしつつ、内部から当て木で修復しようと思うので、スプルースとローズウッドは薄めに裁断してもらいました。

マーティンD-28(1983年製)リペア記 その2

届いたギターのネックブロックには、D-28と刻印されています。シリアルナンバーから、やはり1983年製のマーティン D-28 に間違いありません。

ところで、この1983年には、150周年記念にバックとサイドにハカランダを用いた D-28 も存在しているようです。このギターはどうなんでしょう?

専門家でないと判断できませんが、もしハカランダなら大変なことです・・・。ワシントン条約で保護されている文化資産の破壊につながりかねません(ちょっと大げさ?)。


出品者さんに連絡してみると、発送時点では壊れていなかったという話です。運送会社に連絡をとるので、写真を送ってほしいということになりました。そこで撮った画像が右と下のもの。

トップが激しく割れております。
この位置は、演奏時に右腕が当たる部分なので、かなり深刻です。
 バックのサイド付近がめくれ上がっています。固い素材のローズウッドが、どうしたらこんな状態になってしまうのか?

その下のサイド部分にも2箇所、大きな亀裂が入っています。木目に沿って縦にそれぞれ15cm、25cmほどの割れが確認できます。
トップの反対側にもバインディングに沿って大きな割れがありました。

わたしも数々のギターを見てきましたが、これほど損傷の激しいギターははじめてです。このギターをつくった職人が見たらどんな気持ちになるのでしょうか・・・。

ちなみに、このギターが製造された1983年頃のマーティン社は、製造部門で大胆なリストラが行われており、結果としてベテランの職人たちがギターをつくっていたので、クォリティは高いようです。

マーティンD-28(1983年製)リペア記 その1

オークションでマーティンのギターを見つけたのですが、形式も製造番号の表記もなく、変わったカテゴリーに出品されてます。

ボディ サイドは良質なローズウッド、サウンドホール内部には、マーティン社の焼き印があるものの、あまり見かけないマーク。これは、もしかして・・・!?

いろいろと調べてみると、そのマークはマーティン創立150周年記念の焼き印であることがわかりました。となると、1983年製のギターということになります。トップに2箇所、クラックが入っているけど、修復可能な範囲です。というわけで、予算内で入札してみると、値段は吊り上がることもなく、あっさり落札できました!


ケースがないとのことで、直接引き取りに行きたかったのですが、少し遠かったので宅急便で送ってもらうことに。

数日後、エアキャップと段ボールで梱包された状態で届きましたが、中身を開けてみると、何と!!!ギターが大破損しているではありませんか!? どうしたらこんなにひどく壊れてしまうのでしょう?


ちょうど2歳の息子の誕生日に届いたギターで記念の日になるはずが、とんだ事態になってしまいました。久々にショックを味わいました(泣)